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そして愛へ 「改訂版」

第1章 そして愛へ 「改訂版」

 わたしは、あと半年もしないうちに、大学を卒業します。就職は、大阪にある公立大学の図書館司書に決まりました。わたしは司書の講義も教職課程もとっていたので司書や教師の応募をしようと思っていたとき、進さんの知り合いの教授からの情報でその大学の図書館司書の募集があると知りましたので応募できたのです。わたし、就職しても進さんと一緒に暮らしたいと思っていましたので、大阪にある公立大学の図書館司書に決まって嬉しいです。
 進さんは、70才です。ですから、いろんな知り合いがたくさんいます。進さんのおかげで、就職が決まったのです。それも、感謝です。感謝といえば、奨学金の3百万円はもう払ってくれました。わたし名義の5百万円の預金通帳も、渡してくれました。
 「わたし。それ、貰えません」
 「この三年間。かおりさんが、いっしょに暮らしてくれ
  て、私がどんなにしあわせで嬉しかったか。その嬉し
  さを、かたちにしただけだよ」
 「嬉しいのは、わたしのほうです。進さんに愛してもら
  って、進さんに優しくしてもらって、どんなにわたし
  をしあわせにしてくれましたことか。わたしからあげ
  たいくらいです」
 「そんなに嬉しいと思ってくれるなら、なおさら受け取
  ってほしい」
 「わかりました。いただきます。大切に使いますね。
  そうだ、そのお金でヨーロッパ旅行をしませんか。
  卒論が合格したら、10日か2週間。いいでしょう」
 「ヨーロッパ旅行か。いいね。そのくらいの日数だと、
  いろんな所にまわれるね。だけど、その費用は私が出
  すよ」
 「そうか、しまった。何か言うと、進さんが出してくれ
  るのは、わかっていたのに」
 「ヨーロッパ旅行は、失言じゃないよ。楽しみだもの」
 「もう、進さん。優しすぎ」
 わたし、進さんに感謝することばかりです。

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