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え、ちょっと待って、なんで私が勇者なの!?

第7章 ガシ国

水面に映る巨大な影は、イカダの真下にいることがわかった。

このまま姿を現すようなら、間違いなくイカダから三人は放り出され、ハジャモの餌食となってしまう。

オイドは懐から数本の針をだした。

「化け物に効くかどうかわからんが、これで動きを止めるか」

「なによ、なによしようとしてるの?」と光邦。

「針に毒を塗って、ハジャモに突き刺す」

「大丈夫なの?」

「やってみなければわからん。無駄死にするより、勇者としてわずかな抵抗もしなければ」

「出来れば、なにも起こってほしくないけどね」

光邦の剣を持っている手に、力が入る。

チョットは身を縮め、カタカタと震えていた。

波が荒くなり、沢山の魚影が暴れるようにうごめく。

イカダは何度も揺れ前と後ろの、オイドと光邦はバランスを崩しそうになる。

それから十分後……、


なにも出なかった。

ただ、通りすぎただけのようだ。

巨大な影は見あたらなく、波も魚影も穏やかになった。

「落ち着いたようだな」

オイドは針を束ねて懐にしまう。

「え、私達、助かったの?」

「そのようだ。大臣さん大丈夫かい?」

チョットは力が抜けたのか、

「ふぅ~」とため息で答えた。

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