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え、ちょっと待って、なんで私が勇者なの!?

第7章 ガシ国

だが、そのおかげで数センチ、数メートルと、わずかながら進んでいくことが出来た。

オイドは「おおぉ、こんな画期的な方法があったとは……」と思わぬ大発見に、強い感動を抱いていた。

チョットも夢中に、水をかきながら「さすがです光邦、人違いだったとはいえ、あなたをここに連れてきたのは大正解でした」と称える。

「いや、喜べないわよ! 私としてはなんにも正解してないんですから。 てか、トリセンナシとの文明のギャップはなにっ!?
先に消える国、間違えたんじゃない?」

とはいう光邦だが、早くも酔いが回ってきた。

それもそのはず、乗っているのは、薪が入った大きな袋の口を縛った紐が、ただ巴紋のように三つと繋がっているだけのものだ。ほぼ川の流れで移動するだけのものに、手をオールのように漕いでいくだけなので前進はしても、向きは安定しない。途中、クルクルと見る景色が変わるたびに、脳が揺れるような錯覚を起こす。

光邦はたまらず、「ちょっと岸に上がりましょう」と提案した。

「なぜだ、順調に進んでおるではないか」とオイドが不満げに言った。

「あなたたちのようなアホに、もっといい物を教えてあげようと思ったの」

「アホとはどう言う意味だ?」

「素敵な紳士って意味よ」

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