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え、ちょっと待って、なんで私が勇者なの!?

第7章 ガシ国

「さあ、川を下ろうぞぃ!」

オイドは強引に出航した。

薪が入った大きな袋が三つ、水に浮かぶ。

オイドは袋を抱き締めるように、「こうやって乗るのだ」

「いや、それは乗ってるんじゃないわよ。漂流っていうのよ。転覆した船から流れた板に、しがみつくようなもんじゃない。タイタニックのその後のシーン思い出すわ」

袋にしがみ付くには、一度川の中に入らなければならない。

結局は、腰まで濡れる。

「んもう、ガシについたら、船とはどういう物かって、教えてあげるわよ!」

チョットはこれが当たり前なのだと、グショグショになった後、袋にしがみ付く。

「では、皆の者、出航だ!」

「あんた一人だけよ、気合い入ってんのは」

だが、流れはゆるやかで、ほぼ浮かんでいるだけの時間がすぎていく。

景色も変わっておらず、今しがた眠っていた場所がそこに見えている。

そこで光邦は、オイドとチョットにこう言った。

「あの……お二人ねぇ、両手をこうやって、水面につけて、水をかくように動かせば……」

オイドは同じようにやってみる。

「おお! 前に進んだではないか! しかし、これだと手が濡れてしまうぞ」

「散々、濡れてるじゃない!」

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