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仔犬のすてっぷ

第18章 来訪者たち



「傘買ってくるからちょっと待っててくれ」


 コンビニに到着してすぐ、蒼空はそのまま店内へ入って行った。
僕と奈緒ちゃんは、そのまま外で待つ事になり…



「・・・優くん…優くんは、どうなの?
私と蒼空君のどっちが好きなの?」




・・・来ました。
このパターンでお決まりのシチュエーション!

 それを、僕が 身を持って体験する事になるなんて・・・(大汗)


 僕にとって、二人はどちらとも大切な存在で……
どちらかを選ぶなんて、そんな事は簡単には考えられない。


「・・・・・・どっちかをえらぶなん……」

 そこへ、急な雨に降られて駆け込む第三者が現れた。
どかどかっ!と走ってきたオジサンは、パンパンと体に付いた雨を払いながら


「やれやれ・・・たまらんな、こりゃあ!」

大きめの声で誰に話し掛ける訳でもないのに喚き散らしている。

ざあぁ…と降ってきた雨を困り顔で見る、このオジサンのおかげで、僕の台詞は遮られる形になった。

夏場なのに革製のジャンバーを着て、同じく革製のズボン、ブーツ姿で・・・なんだ?この人?
ライダースタイル?ロックな人?

路上ライブや、パフォーマーをしているような人には見えないし・・・
まあ、こういう街だから、こんな人も居るんだろうけど。


「お嬢ちゃん達、隣、良いかい?灰皿・・・」

僕等のすぐ横に、コンビニ備え付けの灰皿が立っている。
その灰皿が使えるようにオジサンに場所を譲ると、オジサンは嬉しそうにそこへ歩み寄った。


「ありがとよ。最近は愛煙家は肩身が狭くてね…こうして灰皿が置いてあっても、横でタバコを吸うと睨み付ける奴が多いんだよ。おかしいだろ?喫煙所だぜ?ここは」

 ヘビースモーカーで、禁煙にされてしまった事務所でタバコに火を着けてしまい、経理の田中さんに怒鳴られる森川店長と同じような愚痴をこぼすこのオジサンに、妙な親近感を覚えた。



かちっ★
電子ライターでタバコに火を着け、旨そうにタバコを吸うオジサン・・・
気のせいか…ひとつひとつの動きにキレがあるようにも見える。


(・・・この人…なんか雰囲気があるなあ…)


……そう。
あの八極拳を教えてくれたお爺ちゃんみたいな、普通とは微妙に違う雰囲気…に、似てる……?



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