
仔犬のすてっぷ
第18章 来訪者たち
「・・・・おまたせ。傘、二本で足り・・・」
「お、これで役者がそろったな……」
蒼空が傘を持って店から出てくるのと、オジサンが口を開くのが同時だった。
このオジサン・・・?
なんだ・・・?
「…あ」
とん!
僕がものを考えるより早く、奈緒ちゃんに手刀を当てたオジサンは、奈緒ちゃんがグラつくより早く彼女を抱き止めた。
「・・・え?!」
同時に、僕の背後に気配が移動した。
「ーー!」
考えるより早く、体が動く。
脚を肩幅ほど開き、腰を落とし、重心移動しながら身体を後ろへ反転、そのまま相手がいる方向へ右肘を叩き込む。
外門頂肘……
ドシャっ!
当たっ……
「ぐぅぇ…・・・・ぁく」
僕のくちから、胃酸とヨダレがぼたぼたと零れ落ちる。
「あ〜あ…そのままでいれば、苦しまずに気絶できたのにな」
…カウンターで肘が当たるはずだったのに……
いや、一応は当たったのに、それより深く、早いパンチが僕のお腹に突き刺さっていた。
そのままよろよろと僕は後ろへ下がる。
…は、反撃を・・・
構え直しをするが、両脚がすでに笑ってしまい、力が入らない。
「女の子なのに、これで崩れ落ちねえか…少しは武をかじってる……」
「はああぁっ!」
ドカッ!!
一気に飛ぶように間合いを詰めて、蒼空の回転脚がオジサンの首筋へ叩き込まれ・・・
無かった。
身体を軽く捻っただけで、蒼空の蹴りは弾きかえされ、蒼空がバランスを崩し空を彷徨う。
「な…?!なに…」
「悪くはないが、軽いな……」
ダン!!
オジサンの呟きと、鋭い蹴り上げが蒼空を襲う。
空中で踏ん張りも効かず、軽く蹴り上げられた彼の体にスピンがかかり…
「回転脚は、こうだ」
ゴンッ!!!
グゴガガアァン!!!
完全無防備な蒼空の身体はオジサンの鋭い回転脚をモロに受け、コンビニに備え付けのステンレス製の分別ゴミ箱に叩き付けられた。
「・・・・・・・・・あ…ぐ…」
「あぁ…そ、そ…ら……」
圧倒的だ・・・
このオジサン……やっぱり只者じゃ無かった……
「くっ……」
オジサンがこちらを見る。
構えてみるが、脚は動きそうに無い。
「…嬢ちゃんも、眠りな」
前に居たはずのオジサンの声が後ろから聞こえて
僕は闇に包まれた・・・。
