
戦場のマリオネット
第6章 乙女は騎士の剣を掲げて
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リディの戴冠式に相応しい、雲一つない晴れ渡った空だ。
ローズマリー王朝の復権から一ヶ月が過ぎた。
王と王妃はリディと共に城へ戻り、近臣達は釈放されて、外国に身を隠していた貴族達も戻ってきた。チェコラスにいた貴族らは、身の振り方をリディ達の采配に従った。
一つの時代に終止符が打たれ、城が煩雑としていた時期、イリナと私は療養していた。二人してリディに診察を受けろと命じられ、医者に外出を禁じられたのだ。
各役職に然るべき人物を指名し、体制を立て直し、チェコラスにいた要人達との折り合いをつけたリディが強いられた苦労は計り知れない。ことの経緯を城からの報告で知る度に、アイビー家の屋敷を抜け出そうとしては、イリナも私もメイド達に止められた。
久し振りに吸った夏の匂いは、秋の気配を含んでいた。過ぎ去る季節を惜しんででもいるように、太陽が、今年はこれが最後とばかりに燃え上がり、黄金色を注いでいる。
新たな女王を祝福しているのは、近辺の者達だけではない。多分、この土地を古くから加護しているという女神も。
