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戦場のマリオネット

第6章 乙女は騎士の剣を掲げて


「…………」

「でも、そんなリディだから信じようと思った。償いは何にもならないけど、そうじゃない。君に託す。元々、君の国をあんなにしたのは私なんだから。泣くことないよ。……君の手が穢れなかったことが、一番──…」


「命令よ」


 彼女らしからぬ凛とした声が、強みを帯びた。

 か弱げな少女の顔を引っ込めて、彼女が公爵の頭に手を伸ばす。

 頭は、人間の部位でも特に多くの重量を占める。それを持ち上げた細腕は、さっき剣を握って震えていたのと同一とは思えない。

 白い繊手に血がしたたる。軍服の袖にも、腹にも、ぼたぼたと熱い赤が落ちていく。


「この国は、私のものよ。私のために死ぬくらいなら、私のものになって」

「…………」

「イリナと一緒に……私に尽くして。私を離れることは、反逆と見なすわ。もちろんその剣の持ち主も」


 横暴だ。

 私は、イリナの剣を取り落とす。若すぎる女王の前でなければ、私が泣いていたかも知れない。

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