
戦場のマリオネット
第6章 乙女は騎士の剣を掲げて
どうせ神に見離された魂だ。彼女がやる必要はなかった。
アイビー家に受け継がれてきたという、イリナに借りた剣の鞘を抜く。
リディを守るための剣。
彼女が禁秘を抱えないために、一国の女王が臣下に負い目を持たないために、私がこの剣で最後に終わらせるのは私自身だ。
イリナと、本当に一緒にいたかった。明日も明後日もその先も、一緒にいられると確信していた。
しかし私は奪うために、殺すために生かされてきた。リディの語る夢物語のような現実の下に、血にまみれた歴史は似合わない。呪いは私が持って行く。
「やめて!!」
左胸に刃先を立てた私に、リディがしがみついてきた。彼女の柔らかな力が、私の腕を無理矢理に下ろす。
「リディ……離せ。君の理想のためだ。イリナの剣は、君を守るためのもの。君をおびやかす者が残っちゃいけない。この勝利は君のものだから」
「違うわ、私のものなんかじゃない。皆が……ラシュレが、いてくれたから……来てくれなかったら、私は公爵の縄を解いていたかも知れない」
「それがダメなんだ。秘密を知る者が、生きてちゃいけない。言っただろ、誰が国を討ち取ったか曖昧にしたら、戦は終わらない。リディは女王になって、世界を変えるんだろう?」
