
戦場のマリオネット
第6章 乙女は騎士の剣を掲げて
私は血眼で何か叫ぶチェコラス公爵の頭を掴んで、人を斬ったことのない、これからも斬ることのないだろう刃を当てる。
かつて君主と呼び、仕えた男。先代の野心を継いで、彼自身本当に望んでいたのかも分からないような悲願のために、多くの忠心が捧げられ、多くの血が流れていった。私はこの男の人間らしさも知っている。イリナを殺しても構わないと仄めかした彼は、国民として、ジスランと私を対等に見てくれていたこともあったのだろう。
「っ…………」
肉に刃を沈ませてからは、一瞬だった。せめて安らかな眠りに就けるよう、赤い線が入るのも見ない内に、悲しみの匂いを放つ泉から、私は彼の頭を胴から離した。
後方にリディの啜り泣く声が聞こえる。
「新しい国の女王が、そんな弱気でどうするんだ……」
「ごめんなさい、こんなこと……させる、つもりじゃ、…………ごめんなさい、……ごめんなさい、ラシュレ……」
私はリディの側に剣を戻して、彼女の膝元にチェコラス公爵の頭を置く。
「ご即位、おめでとうございます。リディ・ローズマリー女王陛下」
