
戦場のマリオネット
第6章 乙女は騎士の剣を掲げて
「リディと通じていたのは本当だったか……武器を捨てろ!!」
私は間髪入れずに発砲する。兵は、二十人を超えている。その半数の急所を狙って連射して、残る半数を斬りつけていく。
「撃て!殺して構わん!やれ──…がアッ」
派手で快楽的な内装の巡らされた回廊が、血の飛沫に濡れていく。肉片が飛ぶ。
私は銃弾をよけながら、彼らの振り下ろす剣をかわして、まだ利き手の使える隊員からとどめを刺す。ブリーズもいた。私の出自を知りながら、ジスランの本当の娘としていつも私を立てていた男。イリナの乳房や尻や内股まで触れたことのある、しかし罪はない彼の手を、斬り落とす。
「ぐは!」
「くっ……はぁ、はぁ……」
「ぐぉおおっっ!!」
猛進してくる隊員達の胸を突き、返り血を浴びた腕を引いてまた別の方角に剣を構える。
リディを守るためのイリナの想いを、血の海に貶めたくなかった。だがリディを預けたコスモシザの騎士達が危惧していた通り、連日の責め苦を逃れたばかりの私の身体は、多勢を相手にすれば持ち堪えられない。腕以外の傷も、開きかけている。次また銃を撃てば、きっと反動に耐えられないばかりか狙いを外す。
「…………」
「私の部下を皆殺しにするとは、良い度胸だな……ラシュレ」
物陰から出てきたのは、ジスランだった。
「神に媚びてリディの勝利を見届けられなくなったら、イリナに言い訳出来なくなります。お父様でも容赦しません。退いて下さい」
「イリナはどこだ!返せ……返してくれ!」
「っ……」
かつて父親と呼んだ男が、私に縋りついてきた。
泣いていたのか、今から泣くのか、その目は濡れて充血していた。
イリナの居場所を教えろ、会わせろ、と繰り返すジスランの顔は、みっともないほど父親だ。
