
戦場のマリオネット
第6章 乙女は騎士の剣を掲げて
「リディに付いたのは、何故ですか」
「…………」
「どんな理由でも、ラシュレ様を尊敬する気持ちは……変わりません。最後にお聞かせ願えませんか」
イリナのためだった。彼女がリディの無謀に付き従うと言ったから、私は彼女を行かせないためにこの役目を引き受けた。
いや、それだけではない。
「リディには、この国を託してみるだけの期待が持てた」
「結構、可愛い顔をしていますもんね……」
「そうじゃなくて。あのか弱いお姫様が、イリナを連れてチェコラスを夜中に脱走した上に、処刑される直前の私まで連れて逃げた。そんな無茶振りをして、公爵の首を取るとまで言い出したから、反対したら……」
「…………」
「戦を止めて、国を変える。世界を変える……と、言って聞かなかった。国力拡大じゃなく、国民のために国を落とそうとする王女なんか、初めて聞いた。そんな彼女がどんな女王になるか、見てみたい」
頷くミリアムの息が、だんだん薄れていくのが分かる。
彼女を斬るつもりはなかった。しかしクロヴィスの判断は、彼なりの最善だったのだろう。
「リディの治める国で、また……ラシュレ様の、部下になりたかった……」
「君はチェコラスで、最も誇り高い戦士だった」
私はイリナの剣を拾って、五階へ向かった。
目的の回廊まであと少しのところで、四方から兵達が現れた。
ジスランの率いる第一部隊だ。
私は顔見知りの隊員達に、来た道まで塞がれていた。
