
戦場のマリオネット
第6章 乙女は騎士の剣を掲げて
「っく」
彼女の手を離れた剣を掴み、その首に刃を当てた時、彼女の息を飲む気配がした。
「ラシュレ様、腕……」
そのささめきに、はっとした。今の一戦で、袖に血が滲み出ていた。
「あの程度で息を切らしていらしたので、おかしいと思っていました。私は、手負いの貴女に本気を出して、負けたんですね」
「ミリアム、よけろ!!」
後方に銃声が鳴る間際、私はミリアムを解放した。
「わぁぁぁああああああ……!!」
銃を構えたクロヴィスが、撃ち抜かれたミリアムに駆け寄る。
私はミリアムの銃を拾って、クロヴィスの利き手を狙う。続けて肩と足にも弾を放った。
「ぐっ……ぅ」
クロヴィスが気を失った傍らで、ミリアムが薄目で私を見ていた。
「いつか庇ってくれた君を見捨てて、ごめん」
「……もう、良いです。こうなる覚悟がなかったら、チェコラスでは、私みたいな女は修道院にでも入るしかありません」
相手を死に至らしめることもある軍人に、自分の最期を恐れる権利はない。そんなことを、いつか私はミリアムに話したかも知れない。
そそっかしくても素直で勇敢だった彼女は、私の些細な雑談まで心に置いていてくれたのか。
