
戦場のマリオネット
第6章 乙女は騎士の剣を掲げて
「あの者達を行かされたのは、賢明なご判断です……ラシュレ様。私の技は、貴女に仕込まれたもの。コスモシザの男達が何人かかってきていたとしても、私は彼らを殺せていました」
「加減はしてやったということか。君は自慢の部下だった。だが、私もリディを追わなければいけない。君とは殺し合いたくない」
「ええ、私も貴女を殺しません。貴女のお陰で、私は自分を認められましたから。国一つ落とせるほどの力を求められた貴女は、女性であることがハンディにならない戦い方を身につけていらした。そして私も」
「君の訓練について良かった、ここまで頼もしくなってくれていて。敵の動きをよく見ること、無駄な動きは省くこと……怯む暇があるなら負かすイメージを膨らませろと、君にはよく言っていた」
「立ち回りも感覚も、鍛錬や知識の積み重ねも、私はラシュレ様を見て腕を磨いた……だから……だから私は、貴女を敵に回しても負けない!」
「っ、……!!」
手元に響く重圧が、壁際まで追い詰められた私の体勢を崩した。チェコラスでは珍しい、装飾性に富んだイリナの剣が鋭い金属音を立てて、敷かれた絨毯の外へ飛ぶ。
ミリアムの剣先が、私の喉に触れかける。
「ラシュレ様には、手加減しません。隊長への敬意です。でも、私には貴女を貫けません」
「君の勝ちだ。私はリディを追う。足止めは、ここまでにしてくれ」
「いいえ。いつか身を立てるため、仕事は選ばないと言ったはずでは。この際、ラシュレ様でも引きずり出せば、私は国に認められます。少し痛いことをさせていただきますが──…っ、あぐっ」
腰を上げて、私はミリアムの後ろに回り込んだ。彼女の一瞬見せた隙。私は彼女を羽交い締めにして、手首に拳を振り下ろす。
