
戦場のマリオネット
第6章 乙女は騎士の剣を掲げて
私はリディに及ぶ危険を最小限にとどめるため、砦に回った隊員達に、城の警備を分散させて、先に彼女の進行経路から彼らを遠ざけておくよう指示していた。
見越した通り城には主要部隊がいたが、私達はリディを中心に囲み、四階まで難なく突破した。
リディを取り戻した騎士団、そして精鋭部隊の実力は、私の想像を超えていた。王達ではなく、リディをさらってきたジスランの部隊の目のつけどころが、今になって恐ろしくなる。リディが捕われていなければ、コスモシザは落ちなかったかも知れない。
「五階の奥、赤い薔薇の取手の扉……あと少し……」
「チェコラス兵です!追いかけてきました!」
「リディ、こっちへ」
「あっ」
私はリディの腕を引いて、近くの物陰に身を潜めた。騎士達が二人、あとに続く。
追ってきたのは、ミリアム達だ。私のいた第五部隊。
交戦は、まもなくコスモシザが優勢になった。
私はリディの肩を押し、騎士隊員達を瞥見する。
「今の内に、リディを頼む」
「また加勢がないとは限りません。あそこを通過しなければ上へ行けないなら、俺達が食い止めます。ラシュレ様がリディ様をお連れ下さい」
並の軍人相手なら、その方が良い。
だがミリアムは、二十人近いコスモシザの隊員達を相手にして、かすり傷一つ負っていない。
