
戦場のマリオネット
第6章 乙女は騎士の剣を掲げて
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チェコラスに入ったところで、兵が列をなしていた。
私は一人騎士隊員を連れて、彼と共にリディを町へ走らせる。町を抜けて東へ向かえば、城は近い。
人々は普段通りに生活していた。イリナに借りた騎士団の正装に身を包んだ私達に気づいた途端、彼らは兵を呼ぶよう声を上げた。
「リディ、頑張れ、あと一息!」
「武器を持った市民が……!」
市民達のどよめきが、追いかけてくる。彼らは火縄や鉈を手に、私達を悪罵する。
馬を走らせる私達に彼らが追いつくのは不可能だ。しかし、生まれてこのかたリディは、市民達のあんな言葉を耳にもしたことがないだろう。
「手が塞がってなければ、リディの耳を塞ぎたかった……」
「ラシュレ様。我々は貴女を許していません。ですが、その件は非常に同意しますので、此度ばかりはリディ様をお任せします」
森の途切れ目に残してきた隊員達が、追いついてきた。
四人が二十人近くに増えたのは、元コスモシザの軍人達が加勢を願い出てきたからだという。通報で駆けつけてきた兵達だった。
慣れ親しんだ眺めが近づく。
煌びやかな貴族達が夜通し羽目を外していたこともあったチェコラス公爵の居城は、既にコスモシザ兵達が進入し、戦火が飛び交っていた。
