
戦場のマリオネット
第6章 乙女は騎士の剣を掲げて
森の中途地点を越えても兵士達に行き会わなかった私達は、国境まで馬を休ませることにした。
手綱を引いて、草や木の根が這い足場の悪くなっている道を進む。
「城に着いたら、リディ。君は公爵を狙うことだけに専念しろ。他は考えなくて良い」
「分かってるわ。私は真っ直線に公爵が昼間一人で政務をしている寝室へ向かう。その間、貴女達が私に付いてくれるのね」
「絶対守るから、落ち着いて。今朝教えた近道を」
「城の警備がどれだけ固いかですね。城で味方と合流しても……最悪、公爵の居場所までリディ様に付き添えるのは、一人だけになることも」
「一人残れば十分だ。コスモシザ王家の近臣、お前達の実力が名ばかりではないということは分かっている」
昨日と同じで長い髪を上手い具合にまとめたリディは、白い繊手に重たげな剣を握り締めた。装身具にも見えるそれは、ローズマリー家の紋章が刻まれている。
「イリナと私が、騎士とレディの叙任の儀式を交わした時の──…彼女が捧げてくれた私の剣。イリナのくれた誓いの証で狙うのは、チェコラスの公爵の首。昨日はあんなこと言ったけれど、失敗しない。必ず」
