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戦場のマリオネット

第5章 真実と本音



「私は、休戦の交換条件を好機とすることにした。イリナを手放すことだけが、本当に悲しく悔しかった……あの頃はアレットもいなかった、お前だけが大事な一人娘だったからな」

「…………」

「コスモシザは必ずや手に入れ、そしてイリナも取り戻す。そのことだけに闘志を燃やして、今日まで私は踏ん張ってきた。チェコラスが勝利するには、血も涙も持たない、冷淡な戦士が必要だった。私はラシュレをそのように教育した。これの戦場での立ち回りは申し分ない。ラシュレは本当によくやってくれた。信仰深いチェコラスの兵士であれば、とても出来ないようなことまでな……」

「…………」



 神はいない。女神はお前を見捨てたのだ。

 そう言ってこの父と母は、まだ善悪の分別もつかなかった私に何度も諭した。

 初めから彼らの教えが胸に馴染んだわけではなかった。国の平和の贄に出された私を憐れむ振りをする、彼らの芝居に心動かされたこともなかった。
 ただ、豊かになるためには多くの血が流れなければいけないこの土地の創造主が神だとすれば、それは神とは言えない。幼心に、私はそんな風に感じていた。

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