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戦場のマリオネット

第5章 真実と本音




「騙してたのね」

「イリナ」

「許さない。オーキッド夫人、貴女もよ。お前も、ジスラン……お前が何より……!」



 イリナがジスランに掴みかかっていく。彼女は父親の胸ぐらを掴み、彼の佩刀している剣の柄に手を伸ばす。


「っ……!」


 ジスランがイリナを制する。構わず彼女は拳を繰り出す。しかし力技は標的を僅かにも掠らなかった。


「くっ」


 ジスランはイリナの拳を片手に受けて、娘に憐れみの目を向けていた。

 イリナがオーキッド夫人を振り返る。


「貴女が、私に打っていた……薬って……」

「ええ。貴女はもう戦わないで。私達の幸せな娘として、ここで、苦労なんてしないで暮らすのよ」



 イリナの急な衰弱は、怪我の影響ではなかった。母が──…オーキッド夫人が、筋力融解剤を打っていたのだ。

 納得がいった。

 手負いというのを差し引いても、イリナはコスモシザで最強の騎士にしては、あまりに弱々しかった。

 イリナを抵抗させないようにするためか、本当に母心によるものか。

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