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戦場のマリオネット

第5章 真実と本音



「それが私への罰なの?刑なの?アイビー家の血さえ引いてなかったと、私を貶めることが?!」

「イリナ、違うのよ、本当に貴女は私の娘なの」

「リディ様……お助け下さい。貴女に身も心も捧げております、私は貴女の騎士になる定めで産まれてきた、コスモシザのはしためですよね?」

「…………」

「リディ様……っ」


 沈黙するリディの横顔は、沈痛だ。何も答えないほど残酷で、矛盾のない肯定もないと思う。

 チェコラスとコスモシザの最高機密は、国の最高権力者及びその一族と、ごく一握りの貴族達しか知り得ない。

 娘を敵国へ人質に出して、手荒な方法で奪回して、策略のために傷つけた。
 それらの罪の意識からか、オーキッド夫人はイリナに頻りと謝罪する。ジスランも父親らしい顔を向けて、頭を深く下げていた。離れていた二十一年間、イリナを想わなかった日はない──…とも。


「リディ様は、ご存知だったんですか……」

「黙っていてごめんなさい、イリナ。国同士の掟だったの。けれど信じて下さい、私は貴女を信頼して、本当に愛しています。今も変わらず」

「…………」


 破瓜を強要した時でさえ、イリナがここまでの失意を見せたことはなかった。

 言いようのない彼女の目は、私の方にも向けられてきた。


「ラシュレも、知ってたの?」

「ごめん」

「…………。じゃあ、アイビー家の後継者が私じゃないなら──」

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