
戦場のマリオネット
第5章 真実と本音
「リディ様、そう言えば今朝、何か仰ろうとしませんでしたか」
その時、いつか私の体罰に加わっていた軍人達と歓談していたオーキッド伯爵が彼らの輪を離れ、こちらに近づいてきた。
ラシュレによく似た淡い金髪、精悍な顔立ち──…髭の奥に覗く口元が歳相応の苦労を物語っているにしても、現役の軍人らしい佇まいの男に対し、私はドレスの裾をつまんでメイドのように頭を下げる。
「イリナ、顔を上げなさい」
思えば、この男が眠った私を捕獲したのだ。この男の部下がリディ様を連れ去ってきた。
「話がある。皆、広間に集まってくれ」
皆というのは、ラシュレやリディ、オーキッド夫人達も含まれているようだった。
いよいよ私の処遇が決まる。リディ様だけは守らなくては、と、私は気を引き締める。
