
戦場のマリオネット
第5章 真実と本音
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チェコラス城に立ち寄っていた隊員達の馬車が止まると、私は真っ先にラシュレを探した。
見知った軍人達が降りてくるのに混じって彼女の姿を認めた私は、脇目も振らずに走り出す。
「ラシュレ!」
「イリナ……、ただいま」
本当は他のメイド達に倣って、オーキッド家の当主にまず頭を下げるべきだろう。
しかし私はラシュレの無事を確信していた一方で、私の率いてきた騎士達の実力も知っている。万が一彼女が返り討ちに遭ったらと、心のどこかで気が気でなかったのだと思う。
「心配してくれてたの?」
人目も憚らないで胸に飛び込んでしまった私の頭上に、耳も痺れる甘い声が注いできた。
可愛いな、と、ラシュレの手のひらが私の頭に降りてきて、髪が優しく撫でられる。馬鹿にしないで、と、いつもなら頬を膨らませるところなのに、明け方ぶりに見る彼女が綺麗で、私は動けなくなる。すぐ傍らでリディ様が見ているのに。
「お疲れ様、ラシュレ。良かったわ、イリナが心配していたから……」
「リディ……」
私の腕を引き寄せながら、ラシュレがリディと視線を交わす。それは目と目の会話にも見えるのに、私には彼女達が何を話しているのか分からない。
