
戦場のマリオネット
第5章 真実と本音
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ローズマリー一家を西の城へ引き連れていった部隊と別れて、私は父やミリアムと共にチェコラス城へ参上した。
吉報を持ち帰った私達を、公爵は長年の溜飲が下がったように晴々しい顔で迎え出て、労い、褒め、喜んだ。
祝砲が上がる。町は既に祭り騒ぎだ。
「よくやってくれた、ジスラン、ラシュレ、ミリアム。お前達のお陰で我が国は安泰だ。アレットのことだが、約束通り、縁談は彼女の意思に任せよう」
「畏れ多いお言葉です、公爵様」
「とは言え、あれで上手くいっておるみたいだぞ。ジスラン、いくら娘が可愛くても、無理に別れさせぬようにな」
からかうように目尻に皺を刻んだ公爵が、父を小突いた。
日盛り前の城の門前、いつからか私は公爵夫人の視線を感じていた。
「本当に有り難う、ラシュレ。この恩賞は必ず……」
「貴女が励まして下さったお陰です、公爵夫人」
「まぁ」
「このチェコラスに身を捧げると、お約束通りにしただけです」
彼女の手を取り、腰を低めて甲にキスする。
頬を上気させた公爵夫人が、少女のように微笑んだ。
「イリナのことも話さねばな、ジスラン」
公爵が、相変わらず旧友に接する調子で父に話しかけていた。
「これも褒美だ、お前の好きにするが良い」
「有り難きお言葉です、公爵様」
「…………」
「隊長?どうかされました?」
ミリアムの声にはっとする。
何でもない、と返す私は、急にイリナの顔を見たくなった。
チェコラスがこんなにも浮かれているこの時、彼女は屋敷で、どんな思いで過ごしているのか。
