
戦場のマリオネット
第5章 真実と本音
どうしようもない苦しみに胸を抑えている内に、空寝をしなければいけない時間が迫った。
「イリナ、ごめんね」
混濁とした私の思考に、リディ様の鈴を鳴らすような声が差し込んできた。
「私、貴女に黙っていたことが、……。私達の間に隠し事がなかったなんて、本当は、私──」
リディ様が何か言いかけた時、遠くにいた庭師がどこからか走ってきたメイドの耳打ちを受けて声を上げた。
「本当か?!」
興奮気味の庭師に対して、同じ笑顔でメイドが頷く。
「チェコラス……万歳……!勝ったぞ、ついに……コスモシザは我が国の、公爵様のものだ……!」
「あ……ああ……」
「リディ様っ……」
力が抜けたようになったリディ様に駆け寄って、腕を伸ばす。
朝食を口にしない私を叱咤していたリディ様が、一番苦しかったのだ。
平気なわけないのに私の身体を気遣って、気丈に振る舞ってくれていただけだ……と、ぐったりとした小さな身体を抱き締めて、私は自分を恥じ入った。
