
優しく咲く春 〜先生とわたし〜
第18章 揺れる日々
咲はその日、一日中落ち着いていて、発作的な不安で服の裾を握ることはなかったし、夜も自分の部屋へ入っていった。様子を見たらぐっすり眠っていて、久しぶりに1人で眠る咲を見た気がする。
優が帰って来たのは23時を過ぎた頃だった。
「ただいま」
「おかえり。割と早かったね、もっと遅くなるかと思ってた」
「あぁ。思ったよりは」
それにしても、朝早くに出勤して行ったことを考えると、疲れていないことはないだろう。
俺は優の分のご飯を温めて、テーブルに並べながら、自分のマグカップにコーヒーを淹れた。
「ありがとう、いただきます」
優が手を合わせたのを見て、優の向かいに腰を下ろす。
「今日、咲は落ち着いてたんだな」
咲が自室で休んでいることに、優も気づいていた。
コーヒーを啜ると、報告がてら、今日の咲の様子をポツポツと話す。
治療のことも、その流れで伝えた。
「……っていうことがあって。どうしようかと思って、相談」
「んー……そうか、まぁそうだよなぁ」
優は難しい顔をしながら、お茶を一口啜った。
「……咲の気持ちは優先したいかも。ただでさえ、不安定だから。少しでも揺らがなくてもいい方法で」
でも、その揺らがなくていい方法が思いつかない。
「ひとりでできれば、問題はないんだが……。咲は心の状態、自分で把握できてはいるんだな」
『溺れるって感じになる』
咲は、自分の気持ちをこう表現していた。
溺れてパニックになって、どうすることもできない状態に、恐怖を感じていることがわかる。
でも、それを咲はちゃんと自覚している。
「そうみたい。……どうする?」
優がひとしきり考えて間を置いた。
「……早乙女先生にお願いするか」
「その手があったか……!」
俺が表情を明るくすると、優は咎めるように言った。あまり気が進む策ではないらしい。
「奥の手だ。本来、家でできることだし、早乙女先生としても自分ですることに慣れてほしいだろうから」
「でも、今の状況は」
食い下がると、優も同じ気持ちだったらしい。
「そう、だから早乙女先生に相談してみる。予約取れそうであれば、婦人科連れていこう」
「咲……嫌がるかな?」
定期検診は予定を前もって伝えていても嫌がる。
いつもすんなりとはいかないのに、前もって治療をするとわかっていて病院へ連れ出せるのか、少し微妙だ。
優が帰って来たのは23時を過ぎた頃だった。
「ただいま」
「おかえり。割と早かったね、もっと遅くなるかと思ってた」
「あぁ。思ったよりは」
それにしても、朝早くに出勤して行ったことを考えると、疲れていないことはないだろう。
俺は優の分のご飯を温めて、テーブルに並べながら、自分のマグカップにコーヒーを淹れた。
「ありがとう、いただきます」
優が手を合わせたのを見て、優の向かいに腰を下ろす。
「今日、咲は落ち着いてたんだな」
咲が自室で休んでいることに、優も気づいていた。
コーヒーを啜ると、報告がてら、今日の咲の様子をポツポツと話す。
治療のことも、その流れで伝えた。
「……っていうことがあって。どうしようかと思って、相談」
「んー……そうか、まぁそうだよなぁ」
優は難しい顔をしながら、お茶を一口啜った。
「……咲の気持ちは優先したいかも。ただでさえ、不安定だから。少しでも揺らがなくてもいい方法で」
でも、その揺らがなくていい方法が思いつかない。
「ひとりでできれば、問題はないんだが……。咲は心の状態、自分で把握できてはいるんだな」
『溺れるって感じになる』
咲は、自分の気持ちをこう表現していた。
溺れてパニックになって、どうすることもできない状態に、恐怖を感じていることがわかる。
でも、それを咲はちゃんと自覚している。
「そうみたい。……どうする?」
優がひとしきり考えて間を置いた。
「……早乙女先生にお願いするか」
「その手があったか……!」
俺が表情を明るくすると、優は咎めるように言った。あまり気が進む策ではないらしい。
「奥の手だ。本来、家でできることだし、早乙女先生としても自分ですることに慣れてほしいだろうから」
「でも、今の状況は」
食い下がると、優も同じ気持ちだったらしい。
「そう、だから早乙女先生に相談してみる。予約取れそうであれば、婦人科連れていこう」
「咲……嫌がるかな?」
定期検診は予定を前もって伝えていても嫌がる。
いつもすんなりとはいかないのに、前もって治療をするとわかっていて病院へ連れ出せるのか、少し微妙だ。
