
仮面舞踏祭~カーニバルの夜に~
第2章 白羽根仮面の男
「ど、どうして、あなたがここにいるのよ?」
友里奈が興奮と衝撃のあまり声を震わせると、伸吾はたった今、取り去ったばかり白羽根の仮面にチュッと音を立てて口づけた。
相も変わらず気障ったらしい男だ。しかし、不思議なことに、以前の友里奈であれば-彼にあれとほど手痛く裏切られた後でさえ-、こういった彼の仕草を〝絵になる〟と思い込み、思わず見ほれたであろうものだったのに、今は少しも心がときめかない。
かえって、こんな場所まで来てカッコつけようとする男の見栄がいかにも彼という人間の薄っぺらさを象徴しているような気がして、反吐が出そうになる。
「何故、俺がここにいるかって? 答えは簡単、小百合に聞いたんだよ」
〝小百合〟というそのいかにも親しげな馴れ馴れしい呼び方に、友里奈はピンときた。たとえ何の証拠がないとしても、こういう場合、女は動物的に鋭い嗅覚が働くものなのだ。
「あなた、まさか小百合ちゃんにも手を出してたの!?」
最後は悲鳴のような声になった。
小百合というのは、他ならぬ友里奈に伸吾の辞職とこの町の仮面舞踏祭を教えてくれた後輩である。
その刹那、伸吾が友里奈の背に回した手に力を込め、もの凄い力で引き寄せられた。熱い唇が彼女の冷たい唇を塞ぐ。
幾らもがいても、男の力は一向に緩まない。それは三年にも渡る二人の付き合いの中でただの一度も経験したことのないキスだった。男の所有欲と欲望を凝縮したような激しい、貪るような口づけ。
身体と身体がぴったりと密着し、固くなった彼自身が友里奈の下腹部に押し当てられ、熱く濡れた吐息が耳朶をくすぐった。男性にしては、ほっそりとした長い指先が友里奈の胸の先端を一瞬、掠めて通り過ぎた。
あたかも蝶の羽根が通り過ぎてゆくかのような感覚。触れたか触れないかの絶妙な加減は女の身体を知り尽くした男が女を燃え上がらせ、その気にさせる手管だと知っている。
それだけでは飽きたらず、伸吾はドレスのスカート裾を大胆にも大きく捲り上げた。深く切れ込んだスリットの隙間から手が差し入れられ、友里奈のすべらかな太腿をしぎりになで上げる。
空いた方の手で伸吾がもどかしげにズボンのベルトを外すのが判った。
友里奈が興奮と衝撃のあまり声を震わせると、伸吾はたった今、取り去ったばかり白羽根の仮面にチュッと音を立てて口づけた。
相も変わらず気障ったらしい男だ。しかし、不思議なことに、以前の友里奈であれば-彼にあれとほど手痛く裏切られた後でさえ-、こういった彼の仕草を〝絵になる〟と思い込み、思わず見ほれたであろうものだったのに、今は少しも心がときめかない。
かえって、こんな場所まで来てカッコつけようとする男の見栄がいかにも彼という人間の薄っぺらさを象徴しているような気がして、反吐が出そうになる。
「何故、俺がここにいるかって? 答えは簡単、小百合に聞いたんだよ」
〝小百合〟というそのいかにも親しげな馴れ馴れしい呼び方に、友里奈はピンときた。たとえ何の証拠がないとしても、こういう場合、女は動物的に鋭い嗅覚が働くものなのだ。
「あなた、まさか小百合ちゃんにも手を出してたの!?」
最後は悲鳴のような声になった。
小百合というのは、他ならぬ友里奈に伸吾の辞職とこの町の仮面舞踏祭を教えてくれた後輩である。
その刹那、伸吾が友里奈の背に回した手に力を込め、もの凄い力で引き寄せられた。熱い唇が彼女の冷たい唇を塞ぐ。
幾らもがいても、男の力は一向に緩まない。それは三年にも渡る二人の付き合いの中でただの一度も経験したことのないキスだった。男の所有欲と欲望を凝縮したような激しい、貪るような口づけ。
身体と身体がぴったりと密着し、固くなった彼自身が友里奈の下腹部に押し当てられ、熱く濡れた吐息が耳朶をくすぐった。男性にしては、ほっそりとした長い指先が友里奈の胸の先端を一瞬、掠めて通り過ぎた。
あたかも蝶の羽根が通り過ぎてゆくかのような感覚。触れたか触れないかの絶妙な加減は女の身体を知り尽くした男が女を燃え上がらせ、その気にさせる手管だと知っている。
それだけでは飽きたらず、伸吾はドレスのスカート裾を大胆にも大きく捲り上げた。深く切れ込んだスリットの隙間から手が差し入れられ、友里奈のすべらかな太腿をしぎりになで上げる。
空いた方の手で伸吾がもどかしげにズボンのベルトを外すのが判った。
