
ひなとDoctors 〜柱と呼ばれる医師たち〜
第100章 宇髄先生の治療
「ひなちゃん。大人になってきたついでに、また一つ大人になれるか?」
「え?」
またひとつ、大人になるって…?
「ひなちゃんにとって、これは治療。俺にとっては、医行為。俺は医者で、ひなちゃんはただの患者。…いや、それはダメだな。ちょっと訂正。ひなちゃんは、俺の大切な患者だ。でも、どこまでいっても患者に過ぎない。そうじゃないとしても、五条の嫁ってくらいだ。だからな、ひなちゃん。病気を治すための治療だって、そう割り切って頑張れるか?医者として、どこまでも寄り添うから。」
最後に手をギュッギュッと握られ、言い終われば、わたしの頬は涙でびしょびしょ。
宇髄先生の言ってることはわかった。宇髄先生がわたしをとても思ってくれてるのもわかった。
でも苦しい。なのに逃げる術はない。
結局、頑張ることしか残らない。
頑張ってるのに、どれだけ頑張っても、頑張ることを求められる。
もう、何を恨めばいいのかわからないや…。
「はい…」
何も考えるのをやめよう。
何を思うのもやめよう。
やらなきゃいけないことを、ただ無心でこなそう。
わたしは虚ろに返事をし、
「ん。そしたら、治療していくな。」
潤滑剤を再度たっぷり纏わせた指を、宇髄先生はわたしの中へ沈めていった。
