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お面ウォーカー(大人ノベル版)

第7章 記者

夕子は、ワイングラスに軽く口をつける。

そして、自分のスマホを出し、再びお面姿の良夫の写真を見せた。

「組むというのは、田中さんが、またなんらかの犯罪者やトラブルの前に立ち塞がるようなことがあったら、私に連絡して欲しいの」

「は?」

「私が、あなたの姿を写真に収め、記事として投稿する。どう?」

良夫は、空のワイングラスを手に、おばちゃんに対し、俺のにはついでくれんのかとアピールをした後に、返答した。

「待て待て待て、俺はただの会社員や。工場で勤務してるだけの中年男やで。偶然その場に遭遇してど偉い目にあっとるだけやがな。ひょっとしたら、敵と戦うヒーローみたいに思っとるんちゃうか? やめてや、スクープ目的で危ない目に合うんは勘弁やで」

「じゃあ、どうしてお面をつけて町にいるんです? 顔を隠して、悪人を征伐してるんじゃないんですか?」

「まあ、さっきは話の流れで調子にのって、トレーニングしてるとか言うたけど、あのお面がトラブルそのものなんよ。あれ、なんかあったら勝手に顔に貼り付いてきよるんよ」

「勝手に……ですか?」

店のおばちゃんが、テーブルにやってきた。

「じゃこおろしと、田舎煮をどうぞ」

「いや、ワインに合うやつ持ってこいよ。てか、ここの店、いつからなにがあってどうなった!」

二人のやり取りを見て、夕子が微笑む。

「楽しい店ですね」

「面白い店だよ。質問やけど、今まで食べたもんで、これが一番印象深かった料理ってある?」

「印象深かった食べものですか? う~ん、上海で食べた燕の巣のスープかなぁ」

「見てみ、あのおばちゃん、クックパッド調べよるから」

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