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お面ウォーカー(大人ノベル版)

第7章 記者

だが、組むと言ってもいろんな意味がある。

気を取り直して、良夫は聞いた。

「組むとは?」

「とりあえず、平野駅まで来ました。パーキング止めますね」

「勿体ぶるなぁ……」

コインパーキングに車を止め、良夫の誘導で居酒屋に向かった。

「居酒屋詩子」

テーブル席に、向かい合わせで座る夕子と良夫。

目の前には、二つのワイングラスが並んでいる。

おばちゃんはデキャンタに入った赤い液体を、夕子のグラスに注ぐ。

「30年もののビンテージワインで、シャトードワジネールをご用意いたしました」

「いや、おばちゃん、いつの間にソムリエになったんや!?」と良夫。

夕子は、嬉しそうにグラスを眺める。良夫は、ハッとして立ち上がった。

「あっ、鈴木さん車やんか。酒はアカンやろ」

「大丈夫、自動運転で帰れますから」

「なるほど、あんたの場合のAI搭載車ね。なら大丈夫か」

この時代では、自動運転可能なAI搭載車は、各方向に付けられたカメラで周りの状況を把握し、急な飛び出しや、違反走行の車の動きも察知して対応できる。また飲酒運転は認められないが、体にマイクロチップを入れた者であれば、飲酒はもちろん、居眠りしながらでも運転は可能で、コインパーキングも自動決済で、金額か引き落とされ、家まで送り、駐車場まできちんと止められる。

「そう、だからいくら飲んでも大丈夫……とは言っても、私そんなには飲めないんです」

「飲酒運転が許されるって、緩い世の中になったもんだな。で、本当の目的を聞こうか」

良夫が本題に入る。

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