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お面ウォーカー(大人ノベル版)

第7章 記者

「そんなのじゃありませんよ、田中さんと連絡を取るには、それしかなかったんです」

「僕の通勤時に、声かけたらよかったんじゃないの?」

「朝、急いでる時に声かけて、1から5まで話してると、田中さんが遅刻するかもしれないじゃないですか。だから、田中さんが会社に着いた時、会社名を見て、電話番号調べて、すぐに電話して確認したんです。でも、どなたかが出てくれたんですが、田中さんがまだ会社には来てないって言ってましたよ。どこに行ってたんですか?」

「どこでもいいじゃない」

良夫は、通勤電車の中で急激に便意をもよおし、駅のトイレよりも、会社のトイレの方が綺麗だと判断し、急いで会社まで行き、真っ直ぐトイレに向かっていたため、誰もまだ、良夫の姿を見た者はいなかった。

「てか、鈴木さんだっけ? あんたの目的はなんなん?」

良夫は、そう質問しながら、少し期待した。

“実は、あなたの事が好きになって……私と付き合って下さい”という展開を、期待していた。

夕子は、再び信号前でブレーキを踏んだ。

「田中さん」

「は……はい」

「私と……」

(キタキタキタキターーーっ!!)

良夫の胸が、激しく脈打つ。

夕子は、良夫の目を見る。

「私と……組みませんか?」

「なにを?」

良夫の心に、熱く感じていたものが、ガラスのようにくだけた。

「デーンジエーンド」

「え? どういう意味ですか?」

「わかる人にしかわからない、昭和の特撮にあったやつ」と言って、良夫は、軽く項垂れる。

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