
❇️片暉の残照❇️
第12章 お茶会と緊張の挨拶
「この場は――――譲りますが…晩餐会では、許嫁候補のわたくしが隣ですから――――」
「――――…」
インギル様はドレスを翻し――――メインテーブルに近い自分の席へと戻っていった。
すると、困惑していた従者やメイドがぞろぞろと…インギル様の後についていく――――、その中にハンカチを貸してくれたメイドの姿もあり…彼女は何故かホッとした顔をしていた。
「あの子は――――やっぱり…優しいなぁ」
「おい――――大丈夫か?」
サンドラ様に声をかけられ私は「ふえ?」と、変な返事をしてしまった!
「“ふえ?”って…なんだその返事――――おら、いくぞ!」
「え?行くって――――?」
「お前の兄貴が挨拶に行け行けってうるせぇ~から、行くんだろ?」
さっきよりも表情が柔らかくなったサンドラ様が私の腕をグイグイ引っ張り…メインテーブルに連れていかれた。
