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ここから始まる物語

第22章 最後の戦い

 フォビスは、じっとアウィーコートの軍隊を見守っていました。どんな動きを見せるか、まずは観察してみようと思ったのです。
 アウィーコート軍は、どうやら戦うために出てきたわけではないようです。というのも、アウィーコート軍の隊列は縦一列になって、まるでどこかを目指しているかのように、ひたすら前進しているように見えたからです。
 では、目指しているとして、どこを目指しているのでしょうか。
 アウィーコート軍が進んでいく方向、エカタバガン軍を突き抜けた先にあるのは――。
 ――食糧だ。
 フォビスはそこに思い至りました。
 エカタバガン軍が圧倒的な大軍を率いているのを見て、アウィーコート側は正面からの戦いを避けたのでしょう。それで、こちらの力を削ぐために、まずは食糧を台無しにしてしまおうという魂胆に違いありません。
 そう思った時、まるで、フォビスの考えている通りだと言わんばかりに、アウィーコート軍の先頭に立っている男が叫びました。

「敵の食糧の隠し場所はもうすぐだ! みんなとにかく走るだよ!」

 とんでもない巨漢です。大きな梯子を振り回しているところからも、並外れた怪力の持ち主であることがうかがえます。
 あれは、よくピスティと行動を共にしている、ライとかいう名前の男に違いありません。
 それはともかく、食糧を台無しにされたのではたまりません。ここは命令に背いてでも、あのライという男を食い止めなければならないでしょう。
 そう思ったのですが、ふとフォビスは考えました。
 ピスティの近くにいる者といえば、もう一人、ゲンという老人がいたはずです。
 なんでも東の国で軍師を務めていたという、頭の切れる老人です。
 ――もしかして。

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