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ここから始まる物語

第22章 最後の戦い

【邂逅】

 ここは東の森の中です。
 フォビスは、ずっと爪を噛んでいました。
 さっきから、敵の注意を引こうと兵士たちに騒がせているのですが、城壁の内側からは何の反応もないのです。
 こんな場所で、しかもたった百人の兵士しか連れていないことに、フォビスは不安を感じていました。もしも敵が襲ってきたら、ひとたまりもありません。
 こんなことになったのも、将軍のアビナモスが、コーリーに横恋慕したからです。
 アビナモスは、コーリーがフォビスに好意を寄せていることを知っているようでした。しかしアビナモスは、フォビスに少ない兵士だけを連れさせて、本陣から離れた場所に行かせたのでした。きっとコーリーを自分のものにするためでしょう。
 フォビスは、本陣にいるコーリーのことが気になって仕方がありません。もしも、このままコーリーの思いがアビナモスに傾いてしまうかもしまったら・・・・・・。
 そう考えて、フォビスはぶるぶると頭を振りました。
 コーリーにまで見放されたら、フォビスは本当に何もかもを失ってしまうことになります。
 どうにかして、その前に本陣に戻りたいと思うのですが、この場所から敵の注意を引け――というのは、アビナモスの「将軍」という立場から「部下」であるフォビスに出された命令です。逆らえば死刑にさえなりかねません。
 せめて本隊が城壁に攻撃を仕掛けてくれたら、命令を果たしたとして本陣に帰ることも出来るのですが、なかなか戦いが始まる気配はありません。
 ――アビナモスめ、何をしているんだ。
 そう思っていた矢先です。
 戦場が、大きく変化しました。
 街を囲っている城壁の門が開いたかと思うと、なんとアウィーコート軍が出撃してきたのです。
 まさか、圧倒的に不利なアウィーコート側から戦いを仕掛けてくるとは思ってもいなかったので、フォビスは驚きました。

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