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第22章 最後の戦い

 アウィーコート軍も、やぶれかぶれで出撃してきたわけではないでしょう。出撃してきたからには、何らかの作戦を秘めているはずです。
 とするならば、そこにゲンという老人が噛んでいるはず。
 もしもゲンが作戦に一枚噛んでいるのだとすれば、アウィーコート側の作戦には、もっと深い裏があると考えるべきでしょう。
 とすると、本当の狙いは食糧ではなく、別のもの――。
 食料よりも大事なものは何か――。
 そこまで考えて、フォビスはある考えに至りました。
 ――本陣だ。
 見れば、エカタバガン帝国の兵士たちは、こぞって、ライとそれに続くアウィーコート軍に攻撃を仕掛けています。
 反対にいえば、本陣の周辺は守りが手薄になっているはず。
 もしかしたら、アウィーコートの別働隊が、本陣に迫っているのかもしれません。
 しめた――とフォビスは思いました。
 これなら、本陣へ戻ることができます。戦いにおいてもっとも重要な本陣への襲撃を未然に防ぐため――それは、命令に背くのに充分な理由になります。
 フォビスはここぞとばかりに兵士たちに命令しました。
「本陣が危険だ! すぐに本陣へ向かうぞ!」
 さっそくフォビスは東の森を抜けたのでした。
 名目は本陣を救うためです。そして将軍であるアビナモスを守るため。
 しかし本心は違います。自分に好意を抱いているコーリーに会うためです。
 フォビスは全力で、西の森にある本陣へ向かって馬を走らせました。

 ※

 西の森の手前につくと、フォビスは馬から降りました。森の中を馬で進むことはできません。
 馬を降りたフォビスは、茂みをかき分けながら、大急ぎで本陣を目指しました。しかし、急ぎながらも慎重に・・・・・・。なぜなら、本陣を狙う敵の別働隊も、この森に潜んでいるかもしれないからです。
 やがて、目の前に怪しい集団が見えてきました。
 軍と呼ぶにはあまりにも少ない人数ではありますが、それはあきらかにアウィーコートの兵士たちでした。

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