
ここから始まる物語
第22章 最後の戦い
【釜底抽薪】
「釜の底より薪を抽(ぬ)く――それが釜底抽薪と呼ばれる戦術です」
ゲンは、さっそく説明を始めました。
「釜の中で湯が煮えたっているとしましょう。その湯を掬うのは簡単ではありませんな。火傷をしてしまいます。ですから無理に掬おうとせず、まずは釜の下で燃えている薪を抜いてしまうのです。火がなくなれば、自然と湯も冷めて掬いやすくなりましょう」
「なるほど。その話で言う湯は、敵の大軍のことだね。その大軍を戦えないようにしてしまおうっていうことか」
「そのとおりでございます、ピスティさま」
ゲンが目尻に皺を刻むと、ライが目を丸くして、今度はピスティを見ました。
「ピスティさまも、よくわかるだな。おらあ、てっきりうまい飯の作り方でも話し始めたと思っただよ」
「こんな時に飯の作り方など話すはずがなかろう」
「それもそうだな」
ライは笑い声をあげました。それを、ゲンが咳払いをして咎めます。
「ともかく――ピスティさまのおっしゃる通り、ここで言う湯とは、敵の軍勢のことでございます。では薪は何かというと――」
「食糧だね!」
今までの話から、それはすぐにわかりました。
「さようにございます」
ゲンは嬉しそうに笑っています。
「それを踏まえて、あらためて敵を倒す作戦をお話し致しましょう」
「頼む」
ピスティはごくりと唾を飲みました。
おそらく、作戦会議はこれで終わりでしょう。ゲンの作戦に意見がなければ、すぐ行動に移ることになるはずです。そして城に再び帰ってこられるのは、敵を倒した後です。それまでは戻れません。
敵を倒して凱旋するか、敵に敗れて命を落とすか――すべては、それぞれの心構えと行動にかかっています。
「では――」
ゲンは、釜底抽薪の作戦を具体的に話し始めました。
「釜の底より薪を抽(ぬ)く――それが釜底抽薪と呼ばれる戦術です」
ゲンは、さっそく説明を始めました。
「釜の中で湯が煮えたっているとしましょう。その湯を掬うのは簡単ではありませんな。火傷をしてしまいます。ですから無理に掬おうとせず、まずは釜の下で燃えている薪を抜いてしまうのです。火がなくなれば、自然と湯も冷めて掬いやすくなりましょう」
「なるほど。その話で言う湯は、敵の大軍のことだね。その大軍を戦えないようにしてしまおうっていうことか」
「そのとおりでございます、ピスティさま」
ゲンが目尻に皺を刻むと、ライが目を丸くして、今度はピスティを見ました。
「ピスティさまも、よくわかるだな。おらあ、てっきりうまい飯の作り方でも話し始めたと思っただよ」
「こんな時に飯の作り方など話すはずがなかろう」
「それもそうだな」
ライは笑い声をあげました。それを、ゲンが咳払いをして咎めます。
「ともかく――ピスティさまのおっしゃる通り、ここで言う湯とは、敵の軍勢のことでございます。では薪は何かというと――」
「食糧だね!」
今までの話から、それはすぐにわかりました。
「さようにございます」
ゲンは嬉しそうに笑っています。
「それを踏まえて、あらためて敵を倒す作戦をお話し致しましょう」
「頼む」
ピスティはごくりと唾を飲みました。
おそらく、作戦会議はこれで終わりでしょう。ゲンの作戦に意見がなければ、すぐ行動に移ることになるはずです。そして城に再び帰ってこられるのは、敵を倒した後です。それまでは戻れません。
敵を倒して凱旋するか、敵に敗れて命を落とすか――すべては、それぞれの心構えと行動にかかっています。
「では――」
ゲンは、釜底抽薪の作戦を具体的に話し始めました。
