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第22章 最後の戦い

「本陣から部隊への指示、部隊から本陣への報告、これは軍隊が動いていてもいないくても、止めてはなりませぬ。つまり、伝令の動きを見ていれば、本陣がどこにあるのかはおのずと分かるというもの」
「さすがはゲン爺さんだだよ」
 ライは目を丸くしてゲンを見ています。
「そのためにずっと窓の外を眺めていただか」
「そうじゃよ。ライもわしの兵法の極みを見よ」
「この戦いが終わったら、おらゲン爺さんに弟子入りするだよ」
「わっはっは、それがいい、それがいい」
 笑い合う二人を、ピスティは止めました。
「それより、今は目の前の敵に集中したい」
「そうですな、これはしたり」
 ゲンは、ぺたりと額を叩きます。
「目の前の敵ですな。ピスティさまの言う通りですな。まずはエカタバガン軍を片付けることを考えましょうぞ」
「で、敵の本陣はどこにあるんだい」
「ずばり、西の森」
 ゲンは、扇の先で地図の一部をびしっと指し示しました。
「西の森? でも東の森に・・・・・・」
 ピスティも窓から外を眺めていましたが、東の森に、やけに守りの厚い部分がありました。
「東の森にあるのは、偽物の本陣ですな。ピスティさまが見破った通りです」
「やっぱりそうか」
 ピスティも、東にある本陣らしきものには違和感を覚えていたのでした。本陣だから守りが厚くなるのは当然としても、あれほど目立つように本陣を置くはずはなさそうだと思っていたのです。
「もうひとつ重大なことがわかりましたぞ」
 ゲンは細い目を光らせます。
「もうひとつ?」
「なにが分かっただ?」
 ピスティとライは、同時に質問しました。
「敵は大軍。本陣と同じく重要なのは――」
 食糧です――とゲンは扇を少しだけ開いて口許を隠しました。

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