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ここから始まる物語

第22章 最後の戦い

 ゲンは、人差し指を立てて、唇に当てました。
「――東の敵はまだ姿さえ見せてはいないのですぞ」
「そうか」
 兵士の報告では、騒ぎが聞こえただけで、まだ姿を見ていないということでした。
「じゃあ、どうすればいい」
「なに、簡単なことでございます。東で騒いている敵など、放っておけばいいのです」
 そしてゲンは、報告に来た兵士に対して、
「構うこなく、今まで通りにしているように伝えなされ」
 と指示をしたのでした。
「かしこまりました」
 兵士は頭をさげると、部屋から去っていきました。
「でもよう。このままでいいだか」
 ライがゲンに尋ねます。
「このままじっとしてたんじゃあ、街が乗っ取られるのを見ているだけになっちまわねえだか」
「安心せい、ライ。言うたであろう。敵が動かないのは、なにゆえか」
「敵が、作戦を練っている最中だからってんだろ。そんなことはわかってるだよ。でも、作戦が立ったら攻め込まれるってことじゃねえんだか? そうなったら、おらたちはすぐにやられちまうだよ」
「ちょっと待ってくれ、ライ」
 ピスティは、ライを止めました。そしてゲンに尋ねました。
「たしか、反間計と美人計だったかな。敵の密偵を逆に利用する作戦と、美しい女性の力で足止めをさせているって、ゲンは言ってたよね」
「まさしく、ピスティさまのおっしゃる通りですわい」
「それがどうしたっていうだよ。いくら足止めしたって、ただ長引かせてるだけじゃ意味がねえだ」
 ライだけが反対しています。しかしゲンは、そんなライを宥めるように言いました。
「わしも、長引かせるだけではならぬと思っておる。これは単なる足止めではないのだ」
「ゲン、詳しく話してくれ」
 ピスティは促しました。

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