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ここから始まる物語

第22章 最後の戦い

【声東撃西】

 ピスティは、まだ城のてっぺんにある部屋にいました。
 ライとフウとゲンも一緒です。
 城壁の正面に押し寄せている敵を見ると、ピスティは黙っていられない気分でしたが、今はまだ動いてはいけない、とゲンが強く言うのでじっとしているところです。
 ライとフウも椅子にかけて一言も喋りません。
 しかしゲンだけは、じっと窓から外を眺めてきます。
「ゲン、いつまでこのままでいればいいんだ」
 ピスティが問いかけた時です。
 どこからか激しい物音が響いてきました。鉄がぶつかり合う音や、地面を踏み鳴らす音。それに怒鳴り声も混じっているようです。
 それは、あきらかに軍隊が動き始めた物音と声でした。
「なんだ!」
 ピスティは机を叩いて立ちあがりました。
 それと同時に、ばたん、と部屋の扉が開いて、ひとりの兵士が姿をあらわしました。
「報告です! 東の森から、敵が攻撃を仕掛けてきました!」
「なんだって?」
「そら、大変だあ!」
 ピスティとライは、同時に声をあげました。ピスティは、窓辺で外を見ているゲンに言いました。
「ゲン! すぐに東の守りを固めよう!」
 しかしゲンは、ゆったりとした動作で振り向くと、
「その必要はございません」
 頭を横に振ったのでした。
「なぜだ。このまま城壁が破られたら大変じゃないか」
「落ち着きなされ、ピスティさま」
 ゲンは、ピスティの肩にそっと手を置くと、椅子に座るように促しました。そして、報告にやって来た兵士に、落ち着いた様子で尋ねました。
「今のところ、被害はどのくらい出ているかな」

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