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ここから始まる物語

第22章 最後の戦い

 フォビスという男は、はじめから油断ならない男だとは思っていましたが、それとは別に、アビナモスの中には、フォビスに対する殺意が湧いてきました。
 フォビスは、思った以上に早く片付けなければならないようです。
「ところで、フォビス殿」
 アビナモスは、自分の内側に湧き上がる黒い思いを押し隠して、フォビスに語りかけました。
「なんでしょう」
 フォビスはスープを飲みながら答えます。
「街に攻め込む作戦を思いついた。ついてはフォビス殿にも動いてほしいのだが」
「聞きましょう。どういう作戦ですか」
「フォビス殿には、百人の兵士を連れて、街の東側にある森へ潜伏してもらいたい。そしてこちらの合図とともに、街へ攻め込んでほしい」
「たった百人で?」
 フォビスの、スプーンを持つ手が止まりました。
「そう。百人で、です」
「無理だ!」
 フォビスは叫んだかと思うと、スプーンを地面に叩きつけて立ち上がりました。
 しかしアビナモスは動じませんでした。怒りをあらわにしたフォビスを尻目に、作戦の続きを話します。
「もちろん、百人で攻めてもこの街を落とすことが出来ないくらいのことはわかっている。だから、本気で攻める必要はない」
「どういうことですか」
 アビナモスの言葉に、フォビスも落ち着きを取り戻したようです。一度立ちあがったフォビスは、ふたたび椅子にかけました。そんなフォビスに、アビナモスはさらに説明をつづけました。
「正確に言うのなら、街に攻め込むのではなく、攻め込むふりをしていただきたい」
「攻め込むふり、ですか」
 フォビスは顎をかいています。
「そう。喚いて叫んで、とにかく、東の森に大軍がいるのだと敵に思い込ませるのです」

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