
ここから始まる物語
第22章 最後の戦い
「アビナモスさまは、お優しいのですね」
と、コーリーは言いました。
「おまえは確か、アウィーコートから逃げ出してきたんだったな」
「そうです。もっと豊かな暮らしがしたくて、逃げ出そうとしたら、捕って拷問に・・・・・・」
それまで浮かべていた笑みは、しゅんと萎んでしまいました。コーリーはパンを食べる手を止めて、俯いてしまっています。
「どうだ、コーリー。お前さえ良ければ、俺がおまえの面倒を見てやろう。俺はエカタバガンでは将軍を務めている。それなりに豊かな暮らしはさせてやれるぞ」
「本当ですか」
しぼんでしまったコーリーの笑顔が、ふたたび膨らみかけたようでしたが、
「あ、でも――」
膨らみきる前に、その笑顔はふたたび萎んでしまいました。
「どうした」
アビナモスは問いかけますが、コーリーは口ごもってはっきりとは答えません。しかし、何を気にしているのかはあきらかでした。
コーリーの視線は、はっきりとフォビスに注がれています。
きっと、さっきアビナモスが用を足しに行っていた間に、フォビスと何か話していたのでしょう。いや、何か、などとぼんやりした言い方をするまでもありません。フォビスとコーリーは、間違いなく恋愛の話をしていたのに違いありません。
――身分も暮らしも俺の方が上だというのに。
フォビスは、今でこそ、この本陣で偉そうにしていますが、まだエカタバガン帝国の中では、なんの地位にもついていないのです。そればかりか、住まいさえないのです。にも関わらず、コーリーはフォビスを気にしている様子。将軍であるアビナモスよりも、地位もなく、暮らしもままならないフォビスを。
理由はすぐにわかりました。
年齢です。
歳をとった自分よりも、まだ若いフォビスに気持ちが傾くことは、じゅうぶんに考えられます。
と、コーリーは言いました。
「おまえは確か、アウィーコートから逃げ出してきたんだったな」
「そうです。もっと豊かな暮らしがしたくて、逃げ出そうとしたら、捕って拷問に・・・・・・」
それまで浮かべていた笑みは、しゅんと萎んでしまいました。コーリーはパンを食べる手を止めて、俯いてしまっています。
「どうだ、コーリー。お前さえ良ければ、俺がおまえの面倒を見てやろう。俺はエカタバガンでは将軍を務めている。それなりに豊かな暮らしはさせてやれるぞ」
「本当ですか」
しぼんでしまったコーリーの笑顔が、ふたたび膨らみかけたようでしたが、
「あ、でも――」
膨らみきる前に、その笑顔はふたたび萎んでしまいました。
「どうした」
アビナモスは問いかけますが、コーリーは口ごもってはっきりとは答えません。しかし、何を気にしているのかはあきらかでした。
コーリーの視線は、はっきりとフォビスに注がれています。
きっと、さっきアビナモスが用を足しに行っていた間に、フォビスと何か話していたのでしょう。いや、何か、などとぼんやりした言い方をするまでもありません。フォビスとコーリーは、間違いなく恋愛の話をしていたのに違いありません。
――身分も暮らしも俺の方が上だというのに。
フォビスは、今でこそ、この本陣で偉そうにしていますが、まだエカタバガン帝国の中では、なんの地位にもついていないのです。そればかりか、住まいさえないのです。にも関わらず、コーリーはフォビスを気にしている様子。将軍であるアビナモスよりも、地位もなく、暮らしもままならないフォビスを。
理由はすぐにわかりました。
年齢です。
歳をとった自分よりも、まだ若いフォビスに気持ちが傾くことは、じゅうぶんに考えられます。
