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第22章 最後の戦い

「私は月か。そうかもしれないな。今までは王家という太陽の光を浴びていたから輝いていられていたのかもしれない。光を浴びられなくなったら、自ら輝くことのできない私は、闇に沈むのみ。誰からも見向きもされないわけだ」
「誰からも見向きもされないということは、フォビスさまは私ひとりのものということ・・・・・・」
 コーリーは、ありったけの思いを込めて、フォビスを見つめました。
 フォビスも、コーリーから目を離そうとはしません。
「フォビスさま、無理に輝かなくてもいいではないですか。王族の中やアウィーコートだけが居場所ではありません。もっとたくさんの国が、この世界にはあります。自分を知る人のいないところへ行って、ひっそりと、小さくてもいいから家と畑を持って、牛を飼いながら暮らせれば、それだけでも幸せだと思いませんか」
「わかっていないな。孤独がどれほど辛いものか知らないんだろう」
「孤独ですって?」
「そうさ。私は王座を追われた時からずっと一人だった。広場の片隅に寝て、道を歩いてはがらくたを集めてそれを売り、わずかなパンと水でやっと命をつなぐ生活をしていたんだ。誰にも見向きもされずに、だ。そういう孤独を、おまえは知らないだろう。私は、二度とあんな生活は送りたくない」
「私がご一緒しても、孤独ですか?」
「なに?」

 ※

 どくり、と胸が鳴りました。
 その胸を、フォビスはおさえます。
 もしも、このコーリーという女が一緒だったら――。
 想像して見るまでもありません。コーリーのような美女と一緒だったら、決して孤独ではないでしょう。むしろ孤独で貧しくて苦しいほどに、コーリーと過ごす日々は輝きを増しそうです。

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