
ここから始まる物語
第22章 最後の戦い
テントの中にいるのは、コーリーとフォビスだけになりました。
仕掛けるなら、今です。
コーリーは、フォビスに語りかけました。
「あの、あなたは、フォビスメノスさまではありませんか」
すると、急に名前を呼ばれて驚いたのか、フォビスはぴくりと身体を動かしました。
「そうだよ。よく知っているね」
「知っていますとも。私はアウィーコートに住んでいたのです。知らないはずがありません」
「そうか。でも、どうせ、ろくでもない評判しか聞いていないんだろうな」
「ろくでもない評判、ですか?」
コーリーは、わざと知らないふりをしてみせました。
「なんだ、知らないのか。私の顔は知っているくせに」
「申しわけありません。私、あまり政治のことには詳しくないので・・・・・・。お顔は存じあげても、それ以上のことは・・・・・・」
「そうか」
ふ、とフォビスは自嘲気味に笑いました。
「ろくでもない評判って、なにか悪いことでもされたんですか」
「まあな。弟と王座をめぐって争って負けて、アウィーコートでは居場所を失った。駄目な男なのさ」
「まあ」
知っていたことではありますが、コーリーは口を手で覆って、驚いた様子を見せます。そして、言いました。
「なんて素敵な方」
「はあ?」
フォビスは眉をひん曲げます。
「だから哀愁がおありですのね」
「哀愁ってなんだよ」
「勝利しか知らない男は、単純なんです。でも、敗北を知っている男は、強さの中にも、優しさがありますわ。だから私は、きっとフォビスさまのことを覚えていたんだと思います。素敵だったから」
「そんなことを言う人間は、男女に関わらず、おまえくらいのものだよ」
「輝くことしか知らない太陽よりも、輝くことを知りつつ、闇に沈むことも知っている月の方が、はるかに魅力的ですわ」
仕掛けるなら、今です。
コーリーは、フォビスに語りかけました。
「あの、あなたは、フォビスメノスさまではありませんか」
すると、急に名前を呼ばれて驚いたのか、フォビスはぴくりと身体を動かしました。
「そうだよ。よく知っているね」
「知っていますとも。私はアウィーコートに住んでいたのです。知らないはずがありません」
「そうか。でも、どうせ、ろくでもない評判しか聞いていないんだろうな」
「ろくでもない評判、ですか?」
コーリーは、わざと知らないふりをしてみせました。
「なんだ、知らないのか。私の顔は知っているくせに」
「申しわけありません。私、あまり政治のことには詳しくないので・・・・・・。お顔は存じあげても、それ以上のことは・・・・・・」
「そうか」
ふ、とフォビスは自嘲気味に笑いました。
「ろくでもない評判って、なにか悪いことでもされたんですか」
「まあな。弟と王座をめぐって争って負けて、アウィーコートでは居場所を失った。駄目な男なのさ」
「まあ」
知っていたことではありますが、コーリーは口を手で覆って、驚いた様子を見せます。そして、言いました。
「なんて素敵な方」
「はあ?」
フォビスは眉をひん曲げます。
「だから哀愁がおありですのね」
「哀愁ってなんだよ」
「勝利しか知らない男は、単純なんです。でも、敗北を知っている男は、強さの中にも、優しさがありますわ。だから私は、きっとフォビスさまのことを覚えていたんだと思います。素敵だったから」
「そんなことを言う人間は、男女に関わらず、おまえくらいのものだよ」
「輝くことしか知らない太陽よりも、輝くことを知りつつ、闇に沈むことも知っている月の方が、はるかに魅力的ですわ」
