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ここから始まる物語

第22章 最後の戦い

 それからは簡単でした。
 「アウィーコート王国から逃げようとしたら捕まってしまい、拷問を受けた」という、あらかじめ考えておいた理由を告げ、エカタバガン帝国に保護を求めたのです。
 話はとんとんと進んで、あっという間に本陣へ連れてこられたのです。
 テントの中には、男が二人いました。
 ひとりは、長い髪と、てっぺんだけ禿げた頭、こけた頬という、まるで幽霊のような顔の男でした。
 もう一人は見覚えがあります。なまっ白い肌をした、ずる賢こそうな目をした男――これはフォビスメノスです。ピスティの兄で、レナを始末し損ねてから、ひいひい泣きながら姿を消してしまった男です。
 どこへ行ったか気にも止めていませんでしたが、まさかこんな場所で会うとは思ってもいませんでした。きっと、アウィーコート王国に居場所をなくしたフォビスは、エカタバガン帝国に取り入ったのでしょう。
 しかし、よく見てみると、この二人はあまり言葉を交わしません。さほど仲が良くないのでしょうか。いや、ひょっとしたら、むしろ仲が悪いのかもしれません。
 ――だとしたら。
 コーリーは自分がどう動くべきなのかを、すぐにさとりました。
 もし二人の仲が良くないのであれば、その溝をさらに深めればいいのです。そうすれば、エカタバガン軍の動きは鈍くなるでしょう。
 では、どうすれば溝を深めることができるでしょうか。
 まずは観察です。
 コーリーは、命令された通り、テントの隅で膝を抱えて座っていました。
 敵の将軍――アビナモスという名らしい――とフォビスは、アウィーコートの攻め方について話しています。その話し合いは三時間近くも続きましたが、答えは出ませんでした。話はとうとう行き詰まり、黙りこくるうちに、ふたりのうちアビナモスだけが、
「用を足してくる」
 と言って、テントから出ていったのでした。

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