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第22章 最後の戦い

【美人計】

 コーリーは思い出していました。城下街で、ゲンに声をかけられた時のことを。
 自分の美しさに自信を持っていたコーリーですが、ピスティだけは虜にすることができませんでした。ピスティは最後まで、レナという魔法使いの女に愛情を注いでいたのです。
 そんなことを考えながら歩いている時でした。ゲンが声をかけてきたのは。
「頼みがある」
 あの時、ゲンはそう言うと、こんな話をしたのでした。
「あなたはお美しい方じゃ。無理強いするわけではないが、その美しさで、この国を救ってくださらんかのう」
 どういう意味かわからずに問い返すと、
「なんとか敵に紛れ込んで、敵の将軍に近づいてほしい。それで、敵の将軍を骨抜きにしてやってほしいのじゃ。こんな頼みをできる女性は、他にはおらぬ。どうじゃ、やってくれぬか」
 それを聞いたコーリーは、ぞくぞくしたのです。
 自分の美しさに自信をなくしていたコーリーにとって、敵の将軍を骨抜きにする、という役割は、自信を取り戻すチャンスにもなるからです。
 もしも成功したら、自分こそが美しいと、ふたたび誇ることができます。しかもその誇りは、コーリーだけのものではなく、アウィーコート王国を救ったとして、多くの者に讃えられることになるでしょう。
 そう考えたコーリーは、

「それなら是非、やらせていただきたいです。頼まれごとじゃなくても、まさに私がしたいことでしたわ」

 と、すぐに引き受けたのでした。
 そしてコーリーは、準備を整えてから通用門から街の外へ出て、わざと敵に捕まったのです。
 コーリーを捕まえた敵は、話も聞かずに剣の切っ先を向けてきましたが、コーリーは咄嗟に自分の顔を見せ、そしてわざと悲しげな表情を作って見せたのでした。

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