
ここから始まる物語
第22章 最後の戦い
アビナモスはフォビスを見ました。その目は、女に会うべきか――と尋ねているようでした。
フォビスも視線で、会ってみてはどうだろうか――と答えました。
そのやり取りで理解したのか、アビナモスはテントの外へ向かって、
「通せ」
と命令しました。
「は」
見張りの短い返事が聞こえたかと思うと、テントの入口の布が捲れあがり、一人の女が、つんのめるように入ってきました。見張りが女の背中をけったのでしょうか。女は突っ伏すように地面に倒れました。
女の身なりは、決して綺麗とは言えません。服はところどころ破れ、土にまみれています。
「誰だ、おまえは」
アビナモスが尋ねました。
「私は――」
突っ伏していた女は、苦しそうに顔をあげます。
「私は、アウィーコートから逃げてきた者です」
やっと持ち上がった顔を見て、フォビスはハッとしました。女の顔立ちが、美しかったからです。
白い肌、ぽってりとした唇、豊かな胸。あらためて見ると、金色の髪も美しく輝いています。
そんな美人が、地面に這いつくばった格好で顔をあげ、上目遣いにこちらを見ているのだから、たまりません。フォビスは、思わずごくりと唾を飲み込んでしまいました。
しかも、服から覗く手首や胸元には、赤い筋がいくつも見えます。怪我をしているのでしょうか。
「逃げてきたとは、どういうことだ」
アビナモスが尋ねました。見ると、アビナモスは顔をこわばらせています。フォビスと同じように、この女に見とれているのでしょう。
「アウィーコートで、拷問にあっていたのです。貧しい暮らしから逃れるために、国を出ようと思っていたら、兵士に捕まって、国に忠誠を誓え、そうでなくては痛めつけるぞと言われて、何回も何回も・・・・・・」
何回も、どうしたというのでしょう。想像するだけで、フォビスの気持ちは昂ります。
フォビスも視線で、会ってみてはどうだろうか――と答えました。
そのやり取りで理解したのか、アビナモスはテントの外へ向かって、
「通せ」
と命令しました。
「は」
見張りの短い返事が聞こえたかと思うと、テントの入口の布が捲れあがり、一人の女が、つんのめるように入ってきました。見張りが女の背中をけったのでしょうか。女は突っ伏すように地面に倒れました。
女の身なりは、決して綺麗とは言えません。服はところどころ破れ、土にまみれています。
「誰だ、おまえは」
アビナモスが尋ねました。
「私は――」
突っ伏していた女は、苦しそうに顔をあげます。
「私は、アウィーコートから逃げてきた者です」
やっと持ち上がった顔を見て、フォビスはハッとしました。女の顔立ちが、美しかったからです。
白い肌、ぽってりとした唇、豊かな胸。あらためて見ると、金色の髪も美しく輝いています。
そんな美人が、地面に這いつくばった格好で顔をあげ、上目遣いにこちらを見ているのだから、たまりません。フォビスは、思わずごくりと唾を飲み込んでしまいました。
しかも、服から覗く手首や胸元には、赤い筋がいくつも見えます。怪我をしているのでしょうか。
「逃げてきたとは、どういうことだ」
アビナモスが尋ねました。見ると、アビナモスは顔をこわばらせています。フォビスと同じように、この女に見とれているのでしょう。
「アウィーコートで、拷問にあっていたのです。貧しい暮らしから逃れるために、国を出ようと思っていたら、兵士に捕まって、国に忠誠を誓え、そうでなくては痛めつけるぞと言われて、何回も何回も・・・・・・」
何回も、どうしたというのでしょう。想像するだけで、フォビスの気持ちは昂ります。
