
ここから始まる物語
第22章 最後の戦い
「たったひとつ作戦が失敗したからと言って、そう怒っていたのでは、とても戦争などできません」
「ほかに方法がないだろう!」
「それをじっくり考えるのです。慌てることはありません。数で言えば、こちらが圧倒的に有利なんですから」
「だが長引けば食糧がなくなる分、こっちが不利になっていくんだぞ。くそ!」
アビナモスは、剣を地面に叩き落として、乱暴に椅子へ腰掛けました。
「それにしても、密偵どもは、どうしてこれほどばらばらな情報を持ってきたのだろう」
「敵に裏をかかれたのでしょう」
「なんだと?」
「考えてみれば、ピスティの腹心に、やけに頭の切れる老人がいましたね。たしかゲンという名前でしたかな。そのゲンという老人がこちらの密偵を利用したのでしょう」
「密偵を利用するとはどういうことだ」
「街の中に、あらかじめ誤った噂話を数多く広めておいたのです。秘密を守ることは案外難しいもの。だから誤った情報を流して、本物と偽物の区別がつかなくしたのです。おそらく本当のことを知っているのは、アウィーコートの幹部たちのみ。街の人間にも、何が本当のことか分かっていないのです。だから密偵も騙されてしまったのです」
「忌々しい爺がいたものだな」
けッ――とアビナモスは唾を吐きました。
「それにしても、ではどうやって塀を破ったものか・・・・・・」
アビナモスは顎を引いて、眉間に皺をきざみました。
「難しいところですな」
フォビスも、すぐには次の考えが浮かびません。
二人して黙り込んだ時です。
「報告――」
テントの外から、見張りの声がしました。
「なんだ」
アビナモスが面倒くさそうに返事をします。
「将軍に目通りを願っている者をお連れしました」
「目通りだと?」
眉間に皺を刻んだまま、アビナモスはテントの入口へ目を向けました。
「誰だ」
「敵の女です」
「敵の?」
「ほかに方法がないだろう!」
「それをじっくり考えるのです。慌てることはありません。数で言えば、こちらが圧倒的に有利なんですから」
「だが長引けば食糧がなくなる分、こっちが不利になっていくんだぞ。くそ!」
アビナモスは、剣を地面に叩き落として、乱暴に椅子へ腰掛けました。
「それにしても、密偵どもは、どうしてこれほどばらばらな情報を持ってきたのだろう」
「敵に裏をかかれたのでしょう」
「なんだと?」
「考えてみれば、ピスティの腹心に、やけに頭の切れる老人がいましたね。たしかゲンという名前でしたかな。そのゲンという老人がこちらの密偵を利用したのでしょう」
「密偵を利用するとはどういうことだ」
「街の中に、あらかじめ誤った噂話を数多く広めておいたのです。秘密を守ることは案外難しいもの。だから誤った情報を流して、本物と偽物の区別がつかなくしたのです。おそらく本当のことを知っているのは、アウィーコートの幹部たちのみ。街の人間にも、何が本当のことか分かっていないのです。だから密偵も騙されてしまったのです」
「忌々しい爺がいたものだな」
けッ――とアビナモスは唾を吐きました。
「それにしても、ではどうやって塀を破ったものか・・・・・・」
アビナモスは顎を引いて、眉間に皺をきざみました。
「難しいところですな」
フォビスも、すぐには次の考えが浮かびません。
二人して黙り込んだ時です。
「報告――」
テントの外から、見張りの声がしました。
「なんだ」
アビナモスが面倒くさそうに返事をします。
「将軍に目通りを願っている者をお連れしました」
「目通りだと?」
眉間に皺を刻んだまま、アビナモスはテントの入口へ目を向けました。
「誰だ」
「敵の女です」
「敵の?」
