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第22章 最後の戦い

「儂が暮らしておりました東の国には、『三十六計』と呼ばれる奥義書がございます。敵に勝つために、そして敗れぬために編み出された三十六の方法を記した書物でございます」
「三十六もあるだか」
 ライが驚きの声をあげました。
「さよう。戦いにおける六つの状況に対して、それぞれ六つずつの計略がまとめられています。掛け合わせると三十六となる計算にございますな。その六つの状況のうち、今のアウィーコートの状況は――」
 敗戦――とゲンは鋭い目を光らせました。
「敗戦・・・・・・」
 ピスティの体から力が抜けていきます。まだ戦ってもいないのに敗戦状態と言われると、気も挫けるというものです。分かっていたことではありますが・・・・・・。
 しかしゲンは、ピスティを励ましたのでした。
「ピスティさま。気を強くお持ちくだされ。戦いにおいて、兵の士気はもっとも大事なことですぞ。上に立つ王がそのようにしょげていては、下につく者の士気まで下がってしまいまする」
「でも、いきなり敗戦と言われたらさすがに」
「すでに申し上げた通りです。三十六計には、それぞれの状況に応じた六つずつの計略が用意されているのです。それを駆使すれば、どんな状況でも勝利することができまする。仮に勝利が望めなくとも、上手な敗れ方があるのでございます」
「いったい、ゲンはどんな方法を取ろうというんだ」
「さよう。三十六計の中には、まさしく敵の密偵を欺くための方法が記されておりまする。その名も――」
 反間計――とゲンは言いました。
「ハンガンケーってなんだ」
 とライが首をひねります。

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