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ここから始まる物語

第11章 幸せの終わり、不幸の始まり。

「はっきり言うわ。ピスティ、あなた、さっきの女の人が好きなんでしょう」

 ※

 レナの言葉に、ピスティは一瞬、頭の中が真っ白になりました。
「なんてことを言うんだい。そんなはずないだろう。僕はレナを妻に迎えることを決めたんだ。なんであんな、知らない女の人を好きになったりするのさ」
「だってあの人――」
 レナは、ちょっと息を止めてから、
「――とっても綺麗だったじゃない!」
 苦しそうな顔でそう言いました。
 ピスティはどきりとしました。さっきの女性を見た瞬間、たしかに魅力を感じたのです。でも、だからといって、レナを裏切るつもりはまったくありません。ありませんが、あの女性に魅力を感じたこと自体が裏切りにあたるような気がして、ピスティは言葉につまりました。
 それを見透かしたように、レナは顎をあげて、見下すような視線を寄越します。
「ほうら、答えに詰まってるじゃない。私に言えないことを陰に隠れてして、それがバレたら誤魔化すの? ピスティって本当に最低ね!」
 レナの言い方があんまり一方的なものだから、ピスティもさすがにむっとしました。
「僕が最低だって? それなら、レナはわからず屋じゃないか!」
 もともと癇癪持ちだったピスティは、ついつい余計なことまで言ってしまいました。わからず屋は言い過ぎです。言わなければ良かった――と思うのですが、口から出てしまった言葉はもう取り戻すことはできません。後悔しつつも、平気なふりを続けます。
 そんなピスティの態度に、レナも勢いが止められなくなってしまったようです。
「わからず屋ですって?」
 口を尖らせ、華奢な肩をいからせます。
「じゃあ、あの人に渡した手紙はなんだっていうの? どうせ恋文でしょ?」 

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