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ここから始まる物語

第11章 幸せの終わり、不幸の始まり。

 ピスティが、女の背中に向かってかがみ込むと、何やら話しかけたようなのです。女は振り返りました。
 それに合わせるように、ピスティも立ちあがります。そして、どうやらピスティは女に、何かを手渡したようでした。レナの位置からでは、ピスティの背中しか見えないので、何を渡したのかはわかりません。
 が、直後に、女が言った一言を聞いて、レナはそれが手紙であることを知りました。女はこう言ったのです。

 ありがとうございます。このお手紙、私は一生大切に致します――。

 ――手紙?
 しかも、それを受け取った女は、どことなく頬を赤くしている様子。
 これまでのピスティの言葉と合わせて考えると、その手紙がどんな内容のものか、すぐに想像がつきました。
 問いつめずにはいられません。
 レナは、胸の中の不安を押さえつけながら、急いでピスティに駆け寄りました。
「レナ!」
 ピスティはレナの姿を見るや、感激した様子を見せましたが、レナには、その表情が作り物にしか見えません。
「ピスティ、話があるの。ちょっと来て」
「どうしたんだい」
 レナはピスティの袖を引っ張って、庭の隅へ連れてきました。人目を避けるためです。
 レナは周りに誰もいないことを確認してから、ピスティに詰め寄りました。
「ねえ、隠さないでほしいの」
「隠す? 何を隠すっていうんだい」
 ピスティはなにも知らないといった顔をしています。それが、レナの怒りに火をつけました。
「とぼけても無駄よ! 私、見てたんだから。さっき、門のところで、女の人と話をしていたでしょう?」
「それはしていたけど、どうしてそんなに怒っているんだい」
 あくまでピスティはとぼけるつもりでいるのだ、とレナは思いました。が、そうなら、こっちから言ってやるまでです。

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