テキストサイズ

ここから始まる物語

第11章 幸せの終わり、不幸の始まり。

 駆け出そうと思った矢先に、見知らぬ女が門に現れたので、レナは足を止めて様子を見たのでした。
 女は何かを喚きながら、門番と押し問答をしています。遠いので何を言っているのかはっきりとは聞き取ることができません。ですが、言葉の端々はかろうじて聞き取ることができます。
 そのわずかに聞こえる言葉のやりとりから、どうやら女はピスティに直接会いたがっていることがわかりました。
 そこへ、城の中からピスティが出てきました。
 レナはよほど駆け寄ろうと思ったのですが、ピスティはレナの姿を見つける前に、女を見つけたらしく、門の方へと足を向けました。
 いったい何が起きるのかと、レナは気が気ではありませんでしたが、それでも離れたところからじっと様子を伺っていました。
 ピスティは女と何か話しています。しかしやっぱり、それをすべて聞き取ることはできません。でも、わずかに漏れ聞こえてくる言葉に、レナの胸にはどんどん不安が広がって言ったのでした。
 こんな言葉が聞こえてくるのです。

 きみのことが大切だ――。
 きみのために命を捨ててでも、守ってあげるさ――。

 どれもピスティの言葉です。しかも最後には、拳を振り上げて力強くそう言っているのです。
 いったいどういうことなのでしょう。ピスティは、レナを妻に迎えておきがなら、この女を愛しているというのでしょうか。
 レナは高鳴る胸を抑えて、さらに様子をうかがいます。
 話が終わったのか、女はピスティに背中を向けました。その後ろ姿は、レナから見ても、どことなく不憫な感じがしました。
 しかし、そう感じたのもつかの間のことでした。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ